思い出深いウサギ達 その16 フライガール







9/26/25
思い出深いウサギ達 その16
フライガールと呼んだ女の子のウサギは文字通り、ハエがブンブン体の周りに飛んでいたウサギだった。
その痩せた身体から明らかに重篤な病気にかかっているのではと感じ、いくら食べさせても体重は増えなかった。
フライガールは子供を産んでそれほど時間が経ってないのか、授乳してるのではと思わせる胸をしていた。こんな身体で妊娠、出産を強いられるのも酷な話ではないか。
オスもメスも一緒に暮らしている大久野島では妊娠、出産は頻繁に繰り返されており、どんなに多くのウサギが死んでも、どんどん産まれてくるという状況が繰り広げられ、観光に従事する側にとっては経費の全くかからない観光資源を持っているようなものである。
毎朝、ごはんをあげに会いにいくと、嬉しそうに見上げたその痛々しい微笑みに愛おしさと共に言いようのない悲しみに襲われた。フライガールは自分の命が長くないことを知っていたと思う。ある日の夕方、ひとしきり食事を終えるとその痩せた身体で起き上がりよろよろと歩き始めた。その姿をじっと見ていると1度だけこちらを振り返った後、山の方向へ消えて行った。マイケルはあれはさよならの合図だったと言った。マイケルがウサギの為に流した涙を見たのはその時が初めてだったが、後に多くのウサギの為に涙することとなる。
忘れられないウサギは数多くいる。しかし、後にも先にも、私の心に一番深く刻まれたのがフライガールである。






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